top of page

受賞メッセージ

<日華化学株式会社>

このたびは、日本繊維製品消費科学会「消費科学フロンティア賞」という大変栄誉ある賞にご選考賜り、誠にありがとうございます。この栄誉ある賞を頂戴いたしましたことを、共同研究者並びに弊社日華化学株式会社一同を代表し、心より御礼申し上げます。
PFASに代表されるフッ素化合物は、環境残留性や健康面への影響の観点から世界的に大きな関心を集めており、繊維加工分野においても環境配慮型技術への転換が強く求められております。その一方で、フッ素系撥水剤に代わる非フッ素系技術は、撥水性だけでなく、洗濯耐久性、風合い、加工安定性など、さまざまな性能のバランスを取ることが難しく、実用化には多くの課題があることも知られていました。今回の受賞理由の中でも、非フッ素系撥水剤は社会的に求められている一方で、耐久性や風合いなどの問題が多く、優れた技術の登場が待ち望まれていたこと、そしてNEOSEEDがそれらの課題を解決していることをご評価いただきました。こうした点を正式に認めていただけたことを、開発に携わってきた者として大変うれしく思っております。
しかしながら、非フッ素系撥水剤は、初期撥水性のみならず洗濯耐久性や風合いといった実用性能の両立が困難であり、長年にわたり技術的ハードルが存在しておりました。これに対し、私どもは自然界に存在するハスの葉の構造に着想を得て、繊維表面に微細な凹凸構造を形成することで空気層を保持し、水滴を弾く新しい撥水機構の構築に取り組んで参りました。この構造制御により、従来技術では両立が困難であった耐久性と柔軟な風合いを兼ね備えた撥水性能を実現するに至りました。
さらに、本技術においてはアクリル系およびシリコーン系という異なる材料特性を活かし、用途や要求品質に応じた最適な処方設計を可能とした点も特徴でございます。アウトドア用途の高耐久撥水から、日常衣料に求められる柔軟な風合いまで、多様な分野に展開可能な製品群として体系化したことで、実用性と汎用性の両面において高い評価をいただけたものと考えております。
加えて、撥水剤単体の性能向上に留まらず、前処理から染色・加工に至る一連の繊維加工プロセス全体を俯瞰し、最適化する技術提案を行ってきた点も、当社の重要な強みでございます。加工条件や基材の状態が撥水性能に大きく影響することに着目し、トータルソリューションとして顧客価値を提供してきたことが、実用技術としての完成度を高める要因となりました。
また、本技術では単に「フッ素を使わない」というだけでなく、薬剤組成そのものから環境への配慮を進めてきました。植物系のバイオ由来原料を使用することで環境負荷低減に貢献し、機能性を追求するだけでなく、原料の選定段階から持続可能性を意識することは、これからのものづくりにおいて極めて重要であると考えています。その意味でも、今回の受賞は、性能と環境性の両立に取り組んできた姿勢を評価していただけたものと受け止めております。
このたびの受賞理由である「環境保全および社会問題への技術的貢献」「独創性」「生活文化へのインパクト」とのご評価を賜りましたことは、これまでの取り組みが社会的意義を持つものとして認められた証であり、大きな励みでございます。
一方で、繊維産業を取り巻く環境は依然として大きな変革期にあり、持続可能性への要請はますます高まっております。非フッ素系撥水技術に対する期待も、単なる代替技術に留まらず、より高機能かつ多用途への展開が求められているものと認識しております。私どもといたしましては、本技術のさらなる性能向上と用途拡大に取り組むとともに、新たな機能付与や環境負荷低減技術の開発を通じて、繊維産業の持続的発展および社会課題の解決に一層貢献して参る所存でございます。
今後も日本繊維製品消費科学会の皆様のご指導、ご鞭撻を賜りながら、研究開発および技術提案の両面において精進して参ります。

<ミズノ株式会社>

​このたび、「2026年消費科学フロンティア賞」という栄誉ある賞を頂戴し、大変光栄に存じます。
この受賞は決して一人で成し得たものではなく、素材開発の初期段階から製品化・上市に至るまで、各段階でご協力いただいた多くの皆様のお力添えの賜物です。心より御礼申し上げます。
弊社は、「より良いスポーツ品とスポーツの振興を通じて社会に貢献する」という経営理念のもと、ミズノとしてつくりたい未来、製品やサービスを生み出すための指針としてMIZUNO MIRAI VISIONを掲げています。そして、その指針の下になるコアバリューを「心技体が高まる」と定義づけており、そのビジョン・指針やコアバリューを元に、各部門がものづくりやサービスを生み出すことに尽力しています。
弊社アパレル部門は、大きな目標の一つとして「スポーツアパレルの力で選手のパフォーマンスを最大化」することに取り組んでいます。その目標を達成するため、心技体を高めるための課題を洗い出す作業を進めました。その中で、「心」に関しては、盗撮など周りの視線が気になりプレイ時の集中力が低下する、「技・体」に関しては、暑熱環境において身体への負担が大きいということが大きな問題となっていることが明らかになりました。それらの問題を解決するため、「赤外線防透け性向上による盗撮対策」「発汗という体温調節機能の最大活用」の二つを大きな課題としてものづくりを進めることになりました。
暑熱環境下のスポーツでは、過度な体温上昇が発生しやすく、それによって引き起こされる熱中症などの暑熱トラブルが問題視されています。ヒトの身体をとりまく熱の出入りを考慮した際に、熱産生の量の減少または熱放散の量の向上が、暑熱環境下で少しでも安全に快適にスポーツを行うために重要となります。
また、上記のような背景のもと、暑熱環境下での着用を想定したスポーツウエアでは、清涼感を向上するために生地の薄肉化やメッシュ構造などが一般的となっています。その中で、清涼感が向上している一方で生地が透けやすくなり、透けの問題が増加している側面もあります。特に、暑熱環境下では生地が湿潤しやすく、透けの問題が助長される傾向にあります。
その中で、2019年から上市した「湿潤時の通気性」の機能を有するスポーツウエアを展開、様々な種目のアスリートに着用して頂いております。この機能により皮膚上の汗水分の気化が促進され放熱性が向上することで、清涼感の向上、汗による不快感の減少やパフォーマンスアップに繋がっていると感じるといったポジティブな評価を多くのアスリートから頂きました。その中で改めて、アスリートのパフォーマンスをサポートするためにどういった要素が重要かを特定するため、ヒアリング・行動観察といったスポーツ現場を軸とした“ユーザーの潜在ニーズの深堀”を実施しました。その結果、“汗処理の更なる向上”が重要と再認識し、生地上の汗水分の処理の更なる向上に着目したことで、「蒸散性」という新しい速乾性の概念を生み出し、2019年からその概念を実現する技術開発への着手を始めることに至りました。その中で近赤外線吸収に優れた物質に辿り着き、蒸散性を高めるだけでなく、赤外線カメラへの盗撮対策にも応用できると考え、2020年から「赤外線防透け」機能も考慮した技術開発への着手を始めました。
上記背景のもと、発汗という体温調節機能の最大活用に繋がる汗処理機能「湿潤時の通気性」「蒸散性」、加えて着用者の心理的安全性をサポートする「赤外線防透け機能」を有することで、心理的側面・生理的側面の両面からアスリートのパフォーマンスをサポートする機能素材が生まれました。
本素材は、2024年開催の世界大会のユニフォームシャツなどに採用されました。その際には、日本国内のテレビや新聞などはもちろん、海外メディアも含め多くのメディアに掲載して頂き、社会課題解決のアプローチとして、世界規模で高い関心を集めた結果となりました。こういったメディア掲載が、盗撮問題の現状に対する社会認知を高め、社会としての防犯意識が高まることで盗撮被害が減少していく世の中の流れをつくるきっかけとなることを期待しています。
開発品生地の更なる発展および進化の必要性が十分にあります。この開発品の発展および進化を含め、人々の生活を豊かにするモノづくりに引き続き尽力していきます。その中で、より多くの方々の生活の質の向上と繊維産業の発展に寄与していきたいと考えております。
学会関係の皆様におかれましては、今後ともご指導、ご鞭撻賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

bottom of page