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 このたびは「2017年消費科学フロンティア賞」という栄誉ある賞を賜り、大変光栄に存じます。選考委員の先生方、事務局の方々、これまでに三次元スプリング構造体「ブレスエアー®」の研究開発、生産、販売に携わってこられた皆様に心より感謝申し上げます。

 三次元スプリング構造体「ブレスエアー®」は、熱可塑性エラストマーからなる連続繊条のランダムループを接合させて、三次元スプリング構造化した網状クッション体です。その研究開発は1990年代から始まり、高反発性、高通気性、圧縮変形回復性、環境適合性、衛生性を兼ね備える全く新しい高機能クッション材として誕生しました。お客さまの視点に立って、「ブレスエアー®」の物理的特徴をわかりやすく説明するために、東洋紡独自の快適性評価技術を活用し、消費科学的特徴を視覚化、定量化することで、様々な商品を通じて、クッション特性と快適性の両立といった、新しい価値を創出してきました。

「ブレスエアー®」の高反発性、高通気性、圧縮変形回復性、洗ってもすぐ乾くという特徴は、体圧分散性が良い、寝返りがしやすい、発汗時でも寝床内温湿度を低く抑えることができる、清潔に保てるといった消費科学的特徴をうみ、寝具、育児・介護用品などに採用されております。また、長期間使用における厚さ保持率や硬さ保持率に優れており、耐久性も高く、環境適合性も高いことから、新幹線、鉄道、自動車をはじめとするシートへの用途拡大にもつながっております。

このように当社は「ブレスエアー®」によって、クッション分野に網状クッション体という全く新しいカテゴリーを創出したことにとどまらず、「ブレスエアー®」上市20周年を期に次世代の「ブレスエアー®」の開発にも取り組んできました。

これまでの単層品では、「体圧分散性」、「底つき感」、「耐久性」について、単純な硬さの制御では両立できませんでした。この課題を解決すべく、三層構造からなる「ブレスエアー®」を新たに開発しました。この三層構造の「ブレスエアー®」は、厚み方向に中実繊維層-中実繊維層/中空繊維混合層の混在層-中空繊維層からなり、柔らかい中実繊維層と、しっかりとした支持層となる中空繊維層と、中実繊維層から中空繊維層へ変形応力を伝える混在層を有するため、「体圧分散性」、「底つき感」、「耐久性」を両立することが可能となりました。この特殊な構造によって、三層構造の「ブレスエアー®」は高級な寝心地感が得られ、すでに寝具として採用されております。

 近年、犬や猫も高齢化が顕著となっており、健康を重視した商品が販売されております。人と同様に、ペット(犬)の視点に立って、「ブレスエアー®」の消費科学的特徴を評価することを目的として、犬を対象とした快適性評価技術の構築にも取り組んできました。犬においても、体圧分散性の良さ、犬とベッドの空間温湿度の低さが、ベッドに対する嗜好性に関係することを見いだしました。この消費科学的評価結果を基に、ペット専用に「ブレスエアー®」を開発しました。さらに、「体圧分散性」、「底つき感」、「耐久性」を両立する三層構造の「ブレスエアー®」の特徴を生かして、寝たきりでやせた犬でも胸部の圧力が低く、体圧分散性に優れた要介護犬専用マットも開発しました。

 このように、お客さまの立場から、「ブレスエアー®」の消費科学的特徴を視覚化、定量化することは、従来の寝具用途、鉄道シート用途などの商品の開発のみならず、ペット用マットレスといった新たな用途の拡大、採用数の増加につながっております。今後も、快適性評価のさらなる深化により、「ブレスエアー®」の新たな消費科学的特徴を見出して開発に生かし、消費生活の発展を実現していきたいと考えております。

受賞メッセージ

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