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受賞メッセージ

このたびは、「2016年消費科学フロンティア賞」を頂き、誠にありがとうございます。選考委員の先生方、編集委員、事務局の方々、お世話になりました皆様に心よりお礼申し上げます。
受賞の対象となりました「ノーアイロンを実現させた綿100%の形態安定加工シャツの開発」は、洗濯後のシワの残り具合を表す指標であるW&W性4級レベルを実現させた綿100%の「アポロコットシャツ」について記載させていただいたものです。形態安定シャツの歴史の始まりは、昭和40年代のポリエステル65%・綿35%の混紡品を用いたパーマネントプレス加工品です。しかし、昭和の終わりごろになると、自然回帰の傾向が強まり、それまでの合繊全盛の時代から天然繊維が見直され、この流れに沿うために、綿高混率形態安定加工の開発を進めました。更に、弊社では液体アンモニア処理技術を駆使しながら、綿100%の形態安定シャツの開発に移行していきました。
太古の昔から数千年の歴史を経て衣料に用いられてきた天然繊維は、生きて・呼吸して・新陳代謝を行い・発汗する人間にとって最適な衣料素材と言えます。中でも綿や麻などのセルロース系の天然繊維は、天然の呼吸機能を持っていると言われており、吸湿放湿性、吸水性、放熱性に優れる特性を有し、その他、生分解性に優れる、静電気の発生が少ない、などの特性も併せ持っています。そしてこれらの特性は、上質なものほど優れており、素晴らしい着心地を生み出しています。
その反面、セルロース系の天然繊維には、宿命とも言われてきた「縮む」「シワになる」という欠点も存在します。このシワ形成を抑制させる処理として、綿布に液体アンモニア加工及び樹脂加工を施して、綿繊維を改質しています。この樹脂加工は、セルロースの非結晶領域のヒドロキシル基(OH基)を、反応性の樹脂剤で架橋結合させるもので、この架橋結合によって形態安定性を得ることができます。但し、このとき架橋結合が一部分に偏在化してしまうと、生地の強度が大きく低下してしまうなどの不具合が発生します。したがって、できるだけ偏在化させずに効率よく均一に架橋させる必要があり、種々改善を積み重ねてきました。そして、2009年に綿100%シャツ地でW&W性4級レベルまで底上げする新しい方法を見出し、洗濯してもシワが残らないシャツを完成させることができました。この「アポロコットシャツ」は、ノーアイロンで着用できますので、アイロン掛けの電力が節約でき、CO2削減にも配慮した商品とも言えます。
この新しい方法により、形態安定加工技術をシャツ以外にも活用すべく、さまざまなアイテムへの展開をはじめており、すでにブラウス、パンツ、ハンカチなどで商品化しています。今後は、更に商品バリエーションを拡大するとともに、更なる形態安定加工の高度化を実現していきたいと考えています。

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