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受賞メッセージ

ユニチカトレーディング株式会社 冨路本泰弘

の度は,名誉ある「2022年消費科学フロンティア賞」に選んでいただき,誠にありがとうございます.選考委員の先生方をはじめ、事務局の方々、また、商品を通してお会いしたお客様方に心より感謝を申し上げます。
 当社は19977年にシルキー素材「シルミー5」を開発して以降、「ミキシィ」、「エフィン」など、時代のニーズに伴い素材を進化させて参りました。その後、2000年に入ってから20葉断面形状ポリエステル「セシェ」を開発し、お客様からご好評いただいておりましたが、市場ニーズの多様化に伴い、新たに特殊断面ポリエステル「六葉断面糸(セシェ6)」を開発し、市場展開してきました。
「セシェ」は当社のノズル設計技術及びポリマー改質技術により開発された、アルカリ溶出型20葉断面ポリエステル長繊維であり、単糸フィラメント表面にマイクロスリット構造を有することで、繊維表面での乱反射効果を生み出し、フォーマルブラックや、他のカラーにおいても濃染・発色性に優れ、くすみのない深みのある鮮やかな色の表現と、シルクのような“絹鳴り感”を特長としております。しかしながら、アルカリ可溶成分を溶出することで、フィラメント径が細くなり、かつフィラメント間にできた隙間によりソフトな風合いとなる一方、昨今の多様なニーズによっては、そのソフト感が邪魔となる場合もあり、アルカリ処理不要な素材の開発が望まれておりました。
この市場ニーズに対応すべく、アルカリ処理不要で多葉断面構造を有する素材の開発を目指し、当社が有する技術を駆使することで、「セシェ6」を開発するに至りました
 この構造を実現するためには、紡糸段階で、様々な技術的課題をクリアーにする必要があります。特殊な断面であるため、フィラメント間の繊度バラツキや、凹凸構造が出にくいなど、様々な課題に対応するため、使用ポリマーの選定、ポリマー流路バランスの調整、当社グループのノズルメーカーによる繊細かつ緻密なノズル製作など、課題を一つ一つクリアーした結果、最適な条件を見出し、特殊形状の糸を生産することが可能となりました。
このように単糸フィラメント表面を特殊凹凸構造とすることにより光が乱反射し、ギラツキのない上品な光沢と深みのある色合いが表現できることに加え、適度なコシでリネンのようなドライタッチも付与することができます。加えて、単糸フィラメント表面に特殊凹凸構造を糸の段階から発現させることで、アルカリ溶出の工程が不要となり様々な素材との複合が可能となったため、季節を問わず様々なアイテムへの応用により、お客様の多様なニーズへの展開が可能となりました。また、アルカリ溶出不要なことで環境に配慮している点も、お客様の評価につながっております。
現在、「セシェ6」を用いた商品では、3タイプの販売を行っております。
当社独自の特殊仮撚加工を施した「セシェ6」を使用した織編物「JUFY-M」は、マルチフィラメント糸と仮撚捲縮糸に捲縮差、収縮差、形状差を付与したタイプで、微細な色差を表現することが可能となり、①ナチュラルで繊細な杢感、②シルク麻のような表情、③上品な光沢感に加え生地に奥行き感があり高級感が表現できる特長を有します。この特長により、これまでシルキー感に特化した素材では用途展開が出来なかったきれい目カジュアルなどの分野で麻やウールの様な素材感にも応用でき、レディス・メンズ問わずパンツやジャケットや、スカート、ワンピース、コート等の多様なニーズへ対応できます。その他のバリエーションとして、高発色ドライタッチの「JUFY-BR」、清涼感とマット感の「JUFYーFD」、原料にリサイクルポリマーを使用した環境配慮型素材「リシェ」を展開しており、様々なお客様のニーズに対応することが可能です。
現在は、原糸販売およびレディス衣料用途での展開ですが、今後、その特性を活かし、ユニフォーム用途やスポーツ・アスレチック用途への展開を進める予定です。
今回の受賞を励みに、お客様に安心、安全で快適な素材をお届けするべく、ユニチカグループの「事業活動を通じて暮らしと技術を結び、サステナブルな社会の実現に貢献していく」ことを念頭に、さらなる技術開発に邁進していきたいと考えております。
最後に、学会関係者の皆様には、今後ともご指導、ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

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